女性客の指定した場所に出張し、性的サービスを行う出張ホストクラブ

明日は恋する王子様がやってくる

前日は一日中、鏡に向かう。ネイルアーティストを呼び、色とりどりに爪を塗ってもらう。丁寧に紅を引き、目の上には今年流行の色を入れる。この日のために雑誌で最新のメイクを研究している。それからは、何度も「おかしくない?」と周りの人に確かめる。外出する機会が少ないので、これでいいのかどうか世間の基準がよくわからず、不安なのだ。念入りに風呂に入り、着る服を選ぶ。明日は恋する王子様がやってくる。

彼は午後四時ごろ、家にやって来た。両親も公認の仲だ。まずは、ゆっくりと一緒に風呂に入る。湯船につかり、近頃あったことやドラマの話などとりとめのないことをのんびりと話す。スポンジに泡を立てて、丁寧に体を洗ってくれる。風呂から出ると、体を拭いてもらい、お姫様抱っこで、ベッドまで運んでもらう。彼は力持ちだから、軽々と持ち上げてしまう。そっと彼女の手を取り、優しく髪をなでる。ふたりは時間をかけて、ゆるゆると結ばれる。

いつも片想いで終わり、恋が実ることは一度もなかった

彼女は王子様のことが大好きだ。手を握ってもらうだけでも嬉しいし、顔を見るだけでもホッと落ち着く。今まで出会ったなかで、最高の男性だ。これまでにも恋をしたことはあった。しかし、いつも片想いで終わり、恋が実ることは一度もなかった。テレビドラマを見ても、「こんな世界があるんだ」と遠い異次元のことのように感じていた。

「今度はどこかへ遊びに行ってみようよ」彼が低い声でささやく。一緒に出かけられたら、どんなに楽しいだろうか。胸は高鳴る。そして、あっという間に二時間がたってしまった。週に一、二回しか会えないのがとても寂しい。「またね」爽やかに言葉を残して、王子様は帰って行く。魔法は解けてしまった。彼女の王子様、それは出張ホストである。

彼女の王子様、それは出張ホストである

出張ホストクラブというのは、男性が女性客の指定した場所に出張し、性的サービスを行う風俗店のことを指す。もちろん、デートだけで終わる人もいるかもしれないが、通常の店舗型のホストクラブとは違い、客はあきらかに性的サービスを求める女性が多い。

都内で営業する「セフィロス」のホストを指名するためのファイルを見てみると、年齢や顔写真などと一緒に、「得意技」や「性器の長さ〇〇センチ」などという項目がある。十八歳から五十七歳まで約二百人のホストの登録があり、ほとんどが本職を持っている。ホストの登録料は三万円。四年間登録していても、一度も仕事のない人もいる。このホストクラブが特異なのは、障害者の客には割引があることだ。通常は一時間一万円の料金が、障害者であれば一時間五千円になる。

障害者のお客さんの場合は、店の取り分はゼロです

オーナーの吉良仁志さんによると、「普段は店とホストと分け前は半々でやっています。ですが、障害者のお客さんの場合は、店の取り分はゼロです。出張ホストはあまり人に誉められるような商売ではありません。こんなことくらいしかできませんが、社会のために少しでも役に立てばと思い、障害者への割引を始めたんですよね。なんていうか、人生の帳尻を合わせている感じでしょうかね

吉良さんにはホストの経験はない。大分県の高校を卒業後、東京でとび職の仕事をしていた八年前にその仲間とホストクラブを始めようと思いついた。ホストのイメージとはほど遠い、アウトドア派といったいでたちである。実際、釣りが趣味で、世界のあちこちに釣りをしに行っている。店のホームぺージの壁紙には、ホストクラブにはあまり似つかわしくないような、かわいらしい魚のイラストが使われている。口コミだろうか。あるときから、障害者の客が増えてきた。しかし、障害者に接した経験のないホストではなかなか対応しきれない。そこで、知り合いだった障害者ボランティアの経験のある男性をスカウトしてきた。

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